伊藤一刀斎景久は伊豆の大島に生まれ14歳の時、初めて武道によって身を立てようと志、江戸に出てきたのである。鐘捲自斎という中條流の達人の門にはいり修業した。わずか数年に足らずして技がめきめき上達し、諸門弟誰一人肩を並べるものがなかった。自斎窃かに(ひそかに)恐れを抱きその技を惜し(おしい)んで伝えなかった。あるとき鬼夜叉(後に景久と名乗る)は師匠の自斎に向かって、剣術の妙機を自得した旨言上したところ自斎は怒って、「汝(なんじ)が修業して5年に満たない、自得したなぞとはもってのほかだ。」と罵(ののし)った。鬼夜叉は曰く、「術は一心の術であって師伝にあらず、又年月の長短にも依るべきではござらぬ、疑しくば自分の自得した業をご覧に入れましょう。」と頻(ひきり)に試合を乞うた。こうして師匠の鐘捲自斎と鬼夜叉は試合をした。三度立ち合うも自斎は鬼夜叉に一度も勝つことが出来ず惨敗を喫した。自斎は諸国を遍歴し数多くの武芸者と立ち合ったが未だ破れたことはない。鬼夜叉は如何にしてこの神妙の業を自得したのかと問うた。鬼夜叉は「人は寝ている間にも足の痒きに(かゆい)頭を掻く(かく)ものはいない。足痒ければ足、頭痒ければ頭を掻くものでござる。人は寝ている間にも足の痒きに(かゆい)頭を掻く(かく)ものはいない。足痒ければ足、頭痒ければ頭を掻くものでござる。人間には自ら機能があって害を防ぐように出来ている。今、先生が吾を撃たんとしたら心即ち虚にして、吾は防ごうとするは、人間の本能にして且つ実であります。今吾の実をもって先生の虚を打つ、これ勝ちを得る所以(ゆえん)でござる。」と答えた。自斎は大いに感じ「汝は我が及ぶところにあらず、吾は今汝の言により頗る(すこぶる)啓発するところがあった。我が年来極意とせるもの今は汝の身に無用であろうけれども参考のためにこれを伝えておこう。」と悉く(ことごとく)蘊奥(うんのう)の秘伝を彼に授けた。鬼夜叉は深く師の厚意を謝し、これより「伊藤一刀斎景久」と名乗り諸国修業に出で一刀流の流祖古今稀なる名人となったのである。

当無傳塾でも蚊がブーンと飛んできて頬に止まった瞬間に無意識に手の平が飛んでパチンと叩くであろう。人間にはこう言う防御本能が備わっているものだ。そういう機能を有効に使える身体づくりを日頃の稽古に活用している。この理論と以前から気づいていた筒の原理等を融合して、10年ほど経って2014年3月22日(https://mudennoaiki.com/参照)に発表した「力を出さない力を伝えない何もしないに辿り着き、これを[無傳之合氣」
と命名した。大体普段の稽古で気づいたことを普段の稽古に落とし込み、やっていると10年ほどでやっぱりそうなんだと肚に落ちてくるものだ。これを確信できる無傳塾の技としてリストアップしていく。このようにして無傳塾の技づくりをしております。こういう秘訣(コツ)と言うものは「コロンブスの卵」
だと思う。言われてみると何だそうだったのかと得心するものだ。武田惣角翁も「ほうら簡単だろう!]
だから見せないのさ」に通底するものだ。鬼夜叉(景久)も言っているように修行年数の長短ではない。無傳塾では飯田の修行年数の1/3ほどに短縮できる。無傳塾の技はSimple is the Bestなのだ。その上に無傳塾では指導法が確立しているからである。それは2019年11月、ポルトガルセミナーにおいて子供が大人の中に入って合同のセミナーであった。見事成功している。( https://mudennoaiki.com/参照)又市販のDVD、「奥義!触れ即合氣」(BABジャパン2012年7月刊行参照)、「受け継がれる達人技触れ即合氣」(BABジャパン2010年9月刊行参照)等ご覧頂けると得心されるとおもう。

思想は技なり 技は思想なり


座取合氣絞三人捕
内の流儀である「力を出さない 力を伝えない 何もしない」の具現化がこの技になりました。
もっといい合氣をつくろう
この技をもって無傳の合氣(Daito-ryu muden no aiki)と命名し、初山別 Mystars System に登録(2014.6.5)しました。大東流無傳塾飯田の師匠である永世名人位免許皆伝師範堀川幸道翁が米寿の祝いの御席で演武されたこの技を再現しました。これが本物の合氣であります。植芝盛平翁は態(わざ)とらしいものこそが本物といっておられます。これが体操で言うところのウルトラCという技に当たります。


今回のポルトガルセミナーは、想定外にこどもが大人の中に入って合同のセミナーであった。無傳塾は誰でも出来る(力が要らないので老若男女)を標榜しているので、丁度それを証明する良い機会となった。大人と同じ技をこどもにもさせて、こどもが大人に技を掛けてみる試みをしてみた。見事にそれが出来た。無傳塾は力を使わない。(術だから)でも出来ることを立証した。力ではないことを大人の方に分かってもらえた。アピール出来てよかった。

刀の柄取り合氣投げ181027(76)
立つこと技なり、対峙しただけで相手は崩れている。
だから柄を差して崩さなくて済むわけです。
無傳之合氣!THEAIKI

2021年10月15日

いい氣 いい出会い いい仲間づくり
Good energy  Good enccounters Good relationships
合氣護身術大東流無傳塾
塾長・最高師範 飯田 宏雄